税理士になりたい!税理士試験ってなに?
国家資格のなかでも、難関とされる資格の一つが税理士試験です。令和5年度の受験者数は約3.3万人、合格者数は約7,100人(うち5科目合格者600人)。合格率21%という狭き門をクリアし、一人前の税理士となれば年収もキャリアも数段アップすることは間違いないでしょう。そんな税理士の仕事内容や試験対策のポイントなどをまとめました。
税理士の仕事や魅力、年収は?
税理士の仕事には、会計処理の代行や各種申告書の作成、節税対策のアドバイスなど、税務に関するさまざまな業務があります。こうした「税務代理」「税務書類の作成」「税務相談」は税理士の独占業務。資格を持たない人が行うと税理士法違反で罰せられる可能性があります。つまり、税理士の仕事は、法律によって守られているともいえるでしょう。
専門性の高い職業であるため、年収が高いことも税理士の魅力です。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(平成27年)」によると、公認会計士および税理士の平均年収は約1,042万円という結果でした。
一般的に、公認会計士のほうが年収は高いとされますので、実際の税理士の年収はこれより低いとみられますが、働き方によっては平均以上の収入を得ることも可能です。例えば、税理士法人に勤務する税理士は、初任給が300~500万円程度でも、マネージャクラスになれば年収700~1,000万円が期待できます。さらに、独立開業すれば年収1,000万円以上はかたく、なかには年収3,000万円以上の税理士もいます。
独立開業したら自分で顧客を確保しなければなりせんが、その点も自身のペースで顧客開拓ができますし、また定年もなくいつまでも働けるという点も税理士の魅力でしょう。
税理士試験を受けるのに欠かせない受験資格!その条件とは?
税理士試験は、誰もが受けられるわけではありません。ある程度の「学識」「資格」「職歴」を有す者のみに、受験資格が与えられるのです。主な受験資格は、以下の通りです。
学識による受験資格
- 大学、短大または高等専門学校を卒業した者で、法律学または経済学を1科目以上履修した者
- 大学3年次以上で、法律学または経済学を1科目以上含む62単位以上を取得した者
- 一定の専修学校の専門課程を修了した者で、法律学または経済学を1科目以上履修した者
- 司法試験合格者
- 公認会計士試験の短答式試験に合格した者(平成18年度以降の合格者)
資格による受験資格
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日商簿記検定1級合格者
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全経簿記検定上級合格者(昭和58年度以降の合格者)
職歴による受験資格
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法人または事業行う個人の会計に関する事務(複式簿記による仕訳、決算、財務諸表作成事務等)に2年以上従事した者
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銀行、信託会社、保険会社等において、資金の貸付け・運用に関する事務に2年以上従事した者
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税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事した者
なお、受験する際には上記を証明する書類(成績証明書、日商簿記1級の合格証明書など)を提出する必要があります。
税理士試験の内容と科目選択のポイント
税理士試験は科目選択制度を採用しており、11科目中5科目を選んで一定の点数以上を獲得すれば合格になります。なお、11科目は「必須科目」「選択必須科目」「選択科目」の3つにわかれます。
【必須科目】簿記論・財務諸表論
【選択必須科目】所得税法・法人税法
【選択科目】相続税法・消費税法・酒税法・固定資産税・住民税・事業税・国税徴収法
必須の2科目は両方に合格する必要があり、選択必須科目はどちらか1科目に合格すればOKです。
また、選択科目のうち「消費税法と酒税法」「住民税と事業税」はいずれか一方しか受けられないことになっています。
合格した科目は永久に有効ですから、一度に5科目合格しなくても、1年に1科目ずつ合格して税理士を目指すなど、ライフスタイルにあわせて勉強していくのも一手です。
試験の難易度と科目選択のポイント
必須科目と選択必須科目で合格するには、日商簿記3級レベルの知識が必要といわれます。ただし、日商簿記3級に合格していても、税理士試験で合格できるとはいえません。基本的に過去問をアレンジして出題される日商簿記に比べ、税理士試験は毎年新しい問題が出題されます。しかも、分野や難易度といった出題傾向も毎年のように変わりますので、より広く、より深い知識と理解力が税理士試験では求められます。
選択科目について、比較的に容易といわれるのが「酒税」と「国税徴収法」です。他科目と比べて覚えることが少ないため、勉強時間も少なくて済むとされます。ただし、合格率は10%前後と、それほど高いわけではありません。また、これらの知識が求められるクライアントも限られるため、将来活かせない可能性もあります。
例えば、大手企業を相手にした税理士を目指すなら「消費税法」や「事業税」を選択するのも一手ですし、中小企業や個人事業主相手が中心の税理士を目指すなら「相続税法」や「固定資産税」を選ぶのもよいでしょう。税理士になった後で他の科目についても学ぶ機会はありますが、科目選択の際には、自分が得意とする分野と目指す税理士の姿から選ぶのが合格への近道といえるかもしれません。
受験申込と税理士登録までの流れ
応募方法
受験案内や願書は、例年4~5月に管轄の国税局(沖縄は国税事務所)で配布されます。国税局・国税事務所は全国に12カ所しかありません。遠方の場合は、郵送による取り寄せも可能です。成績証明書や合格証明書などの必要書類をそろえたうえで、管轄の国税局・国税事務所へ申し込みます。
試験時間
例年8月に実施。試験期間は3日間ですが、選択科目によっては2日で終わることもあります。試験時間は各科目120分です。
試験時間
1級は各90分、2級と3級は120分、4級は90分となっています。
受験料
1科目:4,000円
2科目:5,500円
3科目:7,000円
4科目:8,500円
5科目:10,000円
合格発表
合格発表は、例年12月ごろ。合否通知が郵送されます。
税理士名簿に登録
税理士試験に合格しても、すぐ税理士になれるわけではありません。合格後、2年以上の実務経験を積み、日本税理士会連合会の税理士名簿に登録されることで、一人前の税理士になれるのです。このため、2~3科目に合格したら税理士法人などに就職し、働きながら残り科目の合格を目指すという方も多いです。
まとめ
税理士試験は難易度の高い国家資格の試験です。一度に5科目の合格を目指すという方より、働きながら1~2科目ずつ確実に合格していき税理士を目指すという方のほうがスタンダード。ただし、あまり長くなるとモチベーションを保つのが大変です。期間を区切り、「今年はこの科目に合格する」など目標を持ちながら勉強していくことが大切でしょう。